▍製作者の想い
複数の色を重ねた「色被せ硝子」で、江戸切子はもっと美しくなる。
- 通常の江戸切子は、一色の薄い色硝子の内側に透明硝子を吹き込み、色硝子が外側に溶着した色被せ硝子を素材とします。その色を削り磨くことで生まれる、鮮やかなコントラストが特長ですが、そこにもう一色加えることで、より複層的で、深みのある色合いとデザインが生み出せると考えました。外側のカットだけでなく、リスクを伴う内側からのカットもかけることで、三層を活かした立体感のある表現を実現しています。
様々な色の組み合わせで、江戸切子をもっと美しくし、その可能性を広げたい。昭和21年に創業し、色被せ硝子をずっと作り続けてきた中金硝子総合。江戸切子の特徴的な赤(銅赤)は、創業者の中村金吾が編み出したものです。美しい色へのこだわりを、ひとつひとつの製品に込めています。
▍技術詳細
職人の呼吸が生み出す、三層の「色被せ硝子」。
- 色被せ硝子は、複数の職人が呼吸を合わせてつくりあげます。調合した原料を1400度の炉で溶かし、棹(さお)で巻き取り、硝子を成形。一人の職人が色硝子を型に吹き込み、瞬時にもう一人の職人がベースとなる透明の硝子を吹き込みます。そこまでが、通常の色被せ硝子の工程。三層色被せ硝子は、さらにもう一層の色硝子を、同じく瞬時に吹き込むことで完成します。一瞬でもタイミングがずれれば、美しい層にはなりません。熟練の職人たちがチームを組むことで実現できる技術なのです。
リスクを伴う内側のカット。それが生み出す、複層的な色合い。
- 通常、江戸切子は外側のみにカットをかけます。切子はダイヤ盤で模様を彫るのですが、同じ模様に別の種類のダイヤ盤や磨きのための木盤(きばん)をあて、磨き模様を付けていきます。通常、内側に模様を入れることはありません。ダイヤ盤が他の箇所にあたり、傷をつけるリスクがあるためです。そこにあえてチャレンジしたのが今回の製品です。三層色被せ硝子ならではの複層的な色の重なりを引き出すため、切子師が深くこだわった技術です。
▍製品詳細
三層色被せ硝子に描き出す、縁起のよい葡萄の紋様。
- 今回のロックグラスは、ベースをクリアな硝子とし、外側に空色の硝子、内側に緑の硝子を重ねた、三層の色硝子としました。外側からのカットに加え、内側からも磨きをかけることで、多彩な色合いや、色のグラデーションを楽しめるグラスに仕上がりました。彫り込んだ葡萄の紋様は、たくさんの実がなることから、子孫繁栄の象徴とされ、西洋、東洋を問わず、縁起のよいものとされています。持つ人の幸福を願い、お酒を飲む時間に鮮やかな彩りをもたらしたい。そんな願いから、このグラスは生まれました。
▍Wonder500認定商品:江戸切子ぐい呑み逆さ富士
- その名の通り、富士山をかたどったぐい呑み「逆さ富士」。小さな底から12本の切子が広がり、真上から見ると花火の形、逆さにすると富士山の形。一つで二度楽しめるぐい呑みです。
▍産学連携
伝統技術と新しい感性。 女子美術大学生と連携し、かつてない江戸切子を製作。
『ほしめぐり』
『TSUBAKI』
- 「工芸者と美大生が江戸川からこれからの伝統をデザインする」をコンセプトとした、新しい伝統工芸製品製作事業「えどがわ伝統工芸産学公プロジェクト」に参画。中金硝子総合が培ってきた伝統技術と、学生たちの新しい感性の融合により、今までにない江戸切子を製作しています。